在職老齢年金とは?働きながら年金が減る仕組みを解説

65歳以降も働き続ける方にとって、「年金が減らされるのではないか」という不安は尽きないでしょう。実際に、一定以上の収入がある場合、年金の一部が減額される「在職老齢年金」という仕組みがあります。

しかし、「働くと年金が全てなくなる」といった誤解は多く、実際にはその仕組みを正しく理解すれば、必要以上に恐れることはありません。本記事では、在職老齢年金の具体的な計算方法や、減額対象となる年金の種類、そして「損をしたくない」と考える方が取るべき現実的な選択肢について、銀行・証券会社の窓口では聞けない構造的な事実を交えながら解説していきます。

結論から言うと、在職老齢年金で減額されるのは厚生年金の「報酬比例部分」のみであり、国民年金の老齢基礎年金や企業年金は減額対象外です。また、減額されない範囲で働くことも可能です。仕組みを理解し、ご自身のライフプランに合わせた最適な働き方を見つけるヒントにしてください。

在職老齢年金で減額されるのは「報酬比例部分」のみ

まず、最も重要なポイントは、在職老齢年金によって全ての年金が減額されるわけではないということです。

私たちが受け取る年金は、主に国民年金(老齢基礎年金)と厚生年金から構成されています。このうち、在職老齢年金の調整対象となるのは、現役時代の給与や賞与に比例して決まる「厚生年金の報酬比例部分」だけです。老齢基礎年金は、いくら働いても全額支給されます。また、企業が独自に設けている企業年金(確定拠出年金や確定給付年金など)も、在職老齢年金の対象外です。

この事実を知るだけでも、「働くと年金がゼロになる」という漠然とした不安は大きく軽減されるはずです。

減額の基準となる「基本月額」と「総報酬月額相当額」

では、具体的にどのような場合に年金が減額されるのでしょうか。その基準となるのが、「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額です。

この2つの合計額が、「支給停止調整額」と呼ばれる47万円(令和6年度)を超える場合に、年金の一部が減額されます。47万円という金額は、社会情勢によって毎年見直されます。

減額される年金の計算式

支給停止調整額(47万円)を超えた場合の減額計算式は以下の通りです。

(基本月額 + 総報酬月額相当額 - 47万円) ÷ 2 = 支給停止額(月額)

例えば、基本月額が15万円、総報酬月額相当額が40万円の場合を考えてみましょう。

この場合、月額4万円が厚生年金(報酬比例部分)から支給停止(減額)されることになります。つまり、年金が全額カットされるのではなく、超えた分の半分が減額される仕組みです。

この計算式からわかるように、総報酬月額相当額が47万円未満であれば、基本月額がいくら高くても減額は発生しません。また、基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円以下であれば、年金は減額されずに満額支給されます。

「損」をしないための働き方と注意点

「年金が減るなら働かない方が良いのか?」と考える方もいるかもしれませんが、それは必ずしも正しくありません。減額されたとしても、給与収入がある分、手取り総額が増えるケースがほとんどです。重要なのは、ご自身のライフプランや経済状況に合わせて、最適な働き方を見つけることです。

1. 総報酬月額相当額を調整する

在職老齢年金の計算において、最も調整しやすいのが「総報酬月額相当額」です。月々の給与や賞与の額を調整することで、支給停止額をコントロールできます。

ただし、給与を減らすことは、当然ながら手取り収入の減少に直結します。年金とのバランスを慎重に検討する必要があります。

2. 退職時期を検討する

65歳以降も働き続ける場合、一度退職して再雇用される際に、給与体系が見直されることがあります。このタイミングで、在職老齢年金を意識した給与設定を相談することも有効です。

3. 繰り下げ受給の活用

年金の「繰り下げ受給」も、在職老齢年金対策の一つとして有効です。年金を繰り下げて受け取ることで、将来受け取る年金額自体を増やすことができます。例えば、65歳で年金が減額されるのであれば、減額される期間は繰り下げて年金を受け取らず、70歳や75歳から増額された年金を受け取るという選択肢です。

この場合、減額されるはずだった年金を受け取らないことで、その間の所得を給与収入に集中させ、将来的に高い年金を受け取ることができます。ただし、繰り下げ期間中の生活費をどう賄うか、という点が課題となります。

4. iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAの活用

在職老齢年金は、あくまで公的年金制度の話です。老後資金の形成においては、iDeCoやNISAといった非課税制度を活用した自己運用も非常に重要です。これらは給与や公的年金とは切り離して運用できるため、在職老齢年金の減額には一切影響しません。ご自身のペースで資産を増やし、老後の生活資金に厚みを持たせることを強くお勧めします。

「働くと損」という思い込みを捨てる

「働くと年金が減るから損だ」という考え方は、一面的な見方です。年金が減額されたとしても、給与収入が増えることで、手取りの総額は増加することがほとんどです。大切なのは、年金と給与のバランスを理解し、ご自身が望む生活水準と働き方を両立させることです。

例えば、月額4万円年金が減額されたとしても、給与で月額10万円稼げば、実質的な収入は6万円増えることになります。また、働くことで社会との繋がりを保ち、健康維持にも繋がるという精神的なメリットも無視できません。

年金制度は複雑であり、ご自身の状況に合わせた最適な選択は一人ひとり異なります。感情的な「損得勘定」だけでなく、冷静に数字と制度を理解し、納得のいく選択をすることが、豊かなセカンドキャリアを築く上で不可欠です。

まとめ:在職老齢年金は仕組みを理解すれば怖くない

本記事では、在職老齢年金の仕組みについて解説しました。

年金制度の構造を理解し、ご自身の働き方やライフプランに合わせて適切に対応することで、「働くと損」という誤解を解消し、安心してセカンドキャリアを歩むことができるはずです。

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